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Soul Joint

ジョージ(仮名)  「やっぱりアル・グリーンだな。ブルーノートからの3作目もいいね。」

ジョン(仮名)   「もう出たの!?またプロデュースはウィリー・ミッチェル?」

ポール(仮名)   「それがちがうのよ。今回はクエストラヴとジェイムス・ポイザーなのよ。」

リンゴ(仮名)    「え?クエストラヴってルーツの!?どんな音なの?」

ジョージ&ポール 「ハイ・サウンドだよ。」

Soul Joint_f0173964_0591645.jpgAL GEEN
「Lay It Down」('08/CD)


ブルーノートからの3作目。今作のプロデュースは、前々作(2003年)で奇跡のコンビ復活を遂げ、続く前作(2005年)でも不変たるハイ・サンドをこれでもかと具現化した、名手ウィリー・ミッチェルではなく、なんと驚きの、現行ブラックシーンを引っ張る新鋭クリエーター、クエストラヴとジェイムス・ポイザーだ。

よく勉強してる。
この二人のクレジットを見て、今時の洗礼された無機質なサウンドを想像させたが、そうではない。
これまた見事なまでのハイ・サウンド。しかも懐古的なものではなく、間違いなく新しい音だ。

ジャム・セッションにて創作。その為ソングライティングは全曲クエストラヴ(ドラム)とジェイムス・ポイザー(キーボード)、スパンキー(ギター)、アダム・ブラックストーン(ベース)、そしてアル本人による合作(一部アンソニー・ハミルトンとコリーヌ・ベイリー・レイも参加)だ。
南部フレイバー溢れる楽曲の良さはアル本人が絡んだことも大きいだろうが、プロデューサー陣がアルの為によく研究、勉強した成果でもあろう。どんな楽曲、どんな音が今のアル・グリーンらしさを最大限表現できるのか…その答えがアルバムの隅々にまで染み込んでいる。粒ぞろい、捨て曲なしだ。

確かに前作・前々作と比較すればソフィスティケイテッドな楽曲が多い分、アルのヴォーカルも幾分繊細で柔らかな印象。その為前作でのメンフィス・ホーンズを前面に押し出し、アルのヴォーカルと直接対峙し、がちんこするような躍動感は今作では失われている。
ブルーノートでの復活は、アルの抑揚の効いた緻密なヴォーカルよりも、その漲る躍動感と溢れた開放感に感動を覚えた僕としては、どちらかを選択するとすればやはり前2作だ。
しかしだからといって今作が否かと聞かれれば、当然それは違う。

日本盤にはボーナス・トラックが1曲収録されている。(12)″Perfect to Me(Live Version)” だ。これを聞く限りアルの中~高音域の声に全盛期の艶が多少失われた感は否めない。それを補うかのように、シャウト過多の嫌いもある。
そんなアルを包括した上での今作の楽曲なんだろう。今のアル・グリーンを最大限活かす。皆グッド・ジョブだね。

フューチャリング・シンガーも豪華。伊達男ジョン・レジェンドをはじめ、ゴスペル臭漂わす骨太シンガー、アンソニー・ハミルトン、そして去年のグラミー賞で主要3部門でノミネートされ話題をさらったオーガニックな癒し系女性シンガー、コリーヌ・ベイリー・レイだ。
単なる新旧コラボの話題以上に、3人の参加した曲はそれぞれ文句なしに素晴らしく、アルバムを彩る良いアクセントとなっている。また3人が御大アル・グリーンに対して大きな敬意を払っていることも、昔からのアルのファンに受け入れられる一因となるだろう。

BEST TRACKは…
フィラデルフィアの雄、ラリー・ゴールドが手掛ける流麗なストリングスが涙をそそるタイトル・トラック(1)か、ラスト(11)のご機嫌でファンキーなサザン・ミディアムか。いや、ベストは(4)。否でも応でも名作"Tired Of Being Alone"を彷彿させる楽曲は、ついつい頬がゆるむ。ラストのアレンジも生のセッション感が伝わってきて良い出来。そしてこの曲のアルはジョニー・テイラーが乗り移ったようなサム・クック調の温かな歌い方を見せる。そんなとこも嬉しかったり。
何れにしてもアルの酸いも甘いも噛み分けた余裕のある歌い回しは、何物にも代えがたい宝。なんせ笑い声さえ歌となり様になるんだから。

今回のこの"Soul Joint"は、今年2月に永眠された日本人グレイト・ソウル・シンガーORITO氏も天国で喜んでいることでしょう。

Track list
1. レイ・イット・ダウン/Lay It Down featuring Anthony Hamilton
2. ジャスト・フォー・ミー/Just for Me
3. ユーヴ・ガット・ザ・ラヴ・アイ・ニード/You’ve Got the Love I Need featuring Anthony Hamilton
4. ノー・ワン・ライク・ユー/No One Like You
5. ホワット・モア・ドゥ・ユー・ウォント・フロム・ミー/What More Do You Want from Me
6. テイク・ユア・タイム/Take Your Time featuring Corinne Bailey Rae
7. トゥー・マッチ/Too Much
8. ステイ・ウィズ・ミー/Stay with Me (By the Sea) featuring John Legend
9. オール・アイ・ニード/All I Need
10. アイム・ワイルド・アバウト・ユー/I’m Wild about You
11. スタンディング・イン・ザ・レイン/Standing in the Rain
12. パーフェクト・トゥ・ミー(Live Version)/Perfect to Me(Taken from Sessions@AOL)・・・日本盤ボーナス・トラック
by l-jones | 2008-06-26 01:01 | soul review
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